1.農地法
農地をお持ちの方の相続は、農地法が関係してきます。
当事務所は、兼業などの農業従事者の相続も扱っています。
農地法は,昭和27年の制定以来,「耕作者自らが農地を所有することを最も適当である(自作農主義)」としてきました。しかし食料自給率向上などの面から農地が地域における貴重な資源であることを重視し,平成21年12月15日に「農地を効率的に利用する耕作者による地域との調和に配慮した権利の取得を促進すること」に改正施行されました。
農地法はほかに,農業生産の基盤である農地を確保し,食料の安定供給の確保に資するため,農地を農地以外のものにすること(=農地転用)を規制し,農地の利用関係を調整する役割があります。 法令: 農地法 e-Gov法令検索 https://elaws.e-gov.go.jp
主に次の2点を規制する法律と考えるとよいでしょう。
① 農地の売買 ②農地の農地以外への転用
2.具体的な手続きは次の通りです。
事務所の地元である、横浜市農業委員会の事例で説明します。
(出典:横浜市HP 「農業委員会」)
(1) 農地の権利移動(農地を農地として買いたい、借りたい)⇒農地法第3条許可
<※1 下限面積について>
下限面積 |
区 |
40アール |
神奈川区 |
30アール |
保土ケ谷区、旭区、港北区、緑区、青葉区、都筑区 |
20アール |
鶴見区 |
(2) 農地の転用(農地を、農地以外の用途に変更したい)⇒農地法第4・5条許可【市街化調整区域】
農地の転用とは、農地を農地以外のものにすること、例えば駐車場、資材置場、住宅、道路等に変更することです。
転用したい農地の場所(区域)によって、手続きが大きく異なります。
市街化調整区域の農地については、具体的な地番、誰が転用するのか、具体的な用途を明確にした上で、中央農業委員会事務局まで問い合わせる必要があります。
(3) 農地の相続税・贈与税の猶予について⇒適格者証明発行など
<相続税や贈与税の納税猶予の特例適用を受ける場合に税務署へ提出する証明書>
※事前に国税庁の管轄税務署に相談。
適格者証明が必要な場合には、税務署への申告期限、誰が相続するのか、特例適用を必要とする農地を明確にした上で、中央農業委員会事務局まで問い合わせる。
相続税の申告書の税務署への提出期限は、相続発生日の翌日から10か月以内です。お気を付けください。
[事前相談・申請から証明書交付までの流れ]
(1)事前相談
特例適用を必要とする農地の全部事項証明書(土地登記簿謄本)、公図、案内図、土地・家屋総合名寄帳登録事項証明書が必要です。
(2)現場調査
特例適用を必要とする農地の現況を調査し、耕作状況や適用できない箇所の有無などを確認します。
(3)受付 毎月10日締切です。申請書及び添付書類とともに提出してください。
(4)審議
総会で証明発行の可否を決定します。総会は基本的に毎月26日開催します。
(5)証明書交付
(4) 継続届出に必要な証明書について(既に納税猶予を受けている方)⇒引き続き農業経営を行っている旨の証明書
<税務署へ納税猶予の継続届出書を提出する際に必要な書類>
税務署に対して「贈与税又は相続税の納税猶予の継続届出書」を提出する際に添付しなければならない書類で、農業委員会が発行するものです。既に納税猶予の特例適用を受けている農業相続人の一部の方が、3年に一度必要となる手続きです。
証明書の発行申請は随時受け付けています。受付後、現場調査を行い、耕作状況に問題がない場合は約2週間で発行されます。
[事前相談・申請から証明書交付までの流れ]
(1)受付(随時)
(2)現場調査
(3)証明書交付
(5) 農地に土を盛りたい、切りたい⇒農地造成指導/一時転用
行政の指導や許可なく土盛りをした結果、山のように土が盛られる、土砂が周辺の農地や道路などに流出する、砂利や建設廃材入りの土を入れられる、といった事例が相次いだため、農地の造成にはルールが定められています。
規模(造成する高さと面積)によって手続きが異なります。申請から許可及び、工事着工が認められるまで時間がかかるため、お早めに中央農業委員会事務局までお問い合わせください。
(6) 農地を相続した場合の手続きが知りたい⇒農地法第3条の3 届出
平成21年12月から、農地を相続等によって取得した時は、農業委員会に届出が必要になりました。
相続登記が完了しましたら、届出書・必要書類を農業委員会窓口へご来庁の上、ご提出する必要があります。(郵送不可)
届出は相続人ごとに必要です。(※共有地も相続人ごとにそれぞれ届け出てください)
現況が農地のものに限ります。相続の日から届出までの期日は特に定めはありません。